画像1: 海外では「トイレ!それが問題だ!」

野球を追い求めての旅に限らず、アメリカでちょっぴり悩ましいのがトイレ事情です。主として防犯上の理由から公共の場にトイレは少なく、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市の地下鉄駅にもトイレは設置されていません。海外では時差や緊張の関係で便秘になりやすく、その反動が街中で出ると思わず脂汗をかくことになります。

旅行ガイドブックなどを見ると、良く「ホテルを利用せよ」と書いてあります。確かにそうなのですが、マンハッタンのド真ん中ならともかく、平均的な規模の街ではそこかしこにホテルがある訳ではありません。わたしは、むしろレストランを探すようにしています。

下手な小細工などはせず、真っ正直に”May I use the restroom?”(トイレを使わせていただけませんか?)と哀願するようにしています。そんなケースでは、演技をしなくても事態の深刻度は表情に現れています。今までこの手で断られたことは一度もありません。ポイントは飲食店であることです。一般の雑貨屋や商店では、そもそもお客用のトイレなどありません。その点、レストランならまちがいなくお客用のものがあるはずで、単にそれを使わせてくれ、というだけなのでハードルはそれほど高くありません。

ただし、ファストフード店は注意が必要です。トイレには鍵が掛かっていることが多く、“For customers only”の鍵を借りようにもまずレジの列に並ばねばならないことがあり、その間「導火線」はチリチリと短くなっていきます。

アメリカの球場でのトイレの思い出もお伝えしましょう。

2004年にシカゴ・ホワイトソックスの本拠地、USセラー・フィールドを訪れた時のことです。トイレの表示マークは、男性用は少年がプレーしているシルエットをあしらったものだったのですが、女性用ではそのバットを振っているシルエットでスカートの形が見てとれました。こんなディテールにもベースボールへの愛が感じられ、嬉しくなったものです。

画像2: 海外では「トイレ!それが問題だ!」

次は2012年、野球のふるさとクーパースタウンでのことです。野球殿堂博物館があるこの街は森と湖に囲まれた風光明媚な所なのですが、そこにはダブルディ・フィールドという1920年開場のこじんまりとした球場があります。2008年までは、殿堂入り式典が行われる週にここでMLB球団による奉納試合が行われていたとても由緒ある「聖地」です。

その正面入り口付近にトイレがあるのですが、古い西部劇の映画で見るような腰から肩の高さまでの木製の観音開きの扉をギギギと押して入ります。すると、なんとも言えないアンモニア臭が鼻と目にツーンと来ました。もちろん、不快な臭いなのですが、なにやら昭和の時代の公衆便所を思い起こさせ、ノルタルジアという点では野球のふるさとの球場のトイレとして妙に相応しい感じがしたものです。

画像3: 海外では「トイレ!それが問題だ!」

最後は、2011年シンシナティ・レッズの本拠地グレート・アメリカン・ボールパークでのことです。ここのプレスルーム内のトイレに入ろうとしたとき、一瞬間違って女子トイレの扉を押そうとしていると感じ、ドキっとしました。「オイオイ、あやうく女子トイレに侵入する痴漢になってしまうところだった」と心の中で呟き、再度入口のマークを確認しました。すると、私は間違っておらずそこは確かに男性トイレだったのです。なぜ、私が勘違いしたか?それはマークが赤色で表示されていたからです。日本では、赤いトイレのマークは女性用を表していますが、この球場では単に全ての表示をチームカラーで統一していただけだったのです。(文・写真=豊浦彰太郎)

 [プロフィール]
福岡県生まれ。MLBライター。初めて生で観戦した小学校1年生の時、巨人対西鉄のオープン戦で王貞治さんのホームランを観たゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。ブログ「豊浦彰太郎のMLBブログ "Baseball Spoken Here"」は高い人気を誇る。

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