画像1: ムネリンがしぶとく生き残っているヒミツ

第2回目の今回は、現地で拾ったメジャーリーガーたちのちょっとウルっとなる側面をご紹介しましょう。

まずは、川崎宗則選手です。彼がブルージェイズに所属していた昨年開幕寸前のオープン戦でのことで、場所はモントリオールのオリンピック・スタジアムでした。

普段お世話になっている雑誌社の方から紹介していただいた現地のプロモーターに掛け合って取材パスをゲットしていた私は、試合前のブルージェイズの打撃練習をフィールドで観ていました。ホゼ・バティスタ、エドウィン・エンカーナシオンらのホームランバッターが、ポンポンスタンドに放り込みます。

そして、ムネリンの番がやってきました。バティスタ&エンカーナシオンは別格としても、他の選手と比較しても彼のパワー不足はいかんともしがたいレベルでした。しかし、それでもじっと見守っていると、見逃す球の比率は全選手の中で彼が圧倒的に高いことに気づきました。

メジャーの打撃練習は日本とは異なり、投手はかなり前の方から速いテンポで軽く投げ込みます。ドンドン投げてもらい、ポンポン打つ、というイメージの打撃練習なのですが、彼は一球毎にしっかり見極めて、少しでもストライクゾーンを外れた投球には決してバットを出さないのです。彼にとっての打撃練習は試合前の調整ではなく、打撃技術を向上させるための修練だったのです。彼が、しぶとく生き残っている理由のひとつを見出した思いでした。

 
次は、カージナルスの知将マイク・マシーニー監督の現役時代のあるシーンについてです。

2004年の夏、蒸し暑いセントルイスでのことでした。試合後球場(現在の球場の隣にあった今は取り壊された先代です)の選手用パーキングの出口を横切ろうとすると、そこに多くのファンがいわゆる「出待ち」をしていました。これ自体は日本も同様ですが、日本と違うのはパーキングから選手がクルマで出てくる際にファンの歓声が大きくかつ熱いのと、中にはクルマを止めサインに応じる選手がいることです。

そして、マシーニーがアメリカ人に大人気の大きめのピックアップトラックで出てきました。助手席には可愛らしい彼の息子さんが乗っています。年齢的には就学前後といったところでしょうか。「マイク!」「マイク!」とファンが叫びます。

すると、マシーニーはクルマを止めるだけでなく、車外に出てサインを始めました。数十人のファンへのサインを終えるまで結構な時間が掛かっていたのですが、私はその間の彼の息子さんの表情が忘れられません。

自分の父親が多くのファンの賞賛と憧れを一身に受け、それにサインで応えている場面を何とも言えぬ誇らしげな視線で見守っていたのです。父への尊敬の念は、この時一層高まったことでしょう。

画像2: ムネリンがしぶとく生き残っているヒミツ


もうひとつ「出待ち」絡みです。2012年8月、オークランドでのことです。この年のアスレチックスはとにかく若いチームで、先発ローテーション全員がルーキーという状況すらありました。したがって薄給の選手が多く、年俸総額は5950万ドルでメジャー全体でも2番目の低さでした。選手用パーキングから出てくる選手のクルマも、街道沿いの中古車販売店で数千ドルで買えそうな庶民的なものばかりです。

それはそれで見ていて微笑ましいものでした。ところが・・・

そこに、ロールス・ロイスのコンバーチブルが現れたのです。しかも、ホイールはギラギラのクロームメッキと、悪趣味とも取られかねないとびっきりド派手な仕様です。すると、出待ち中のファンが「ココ!」「ココ!」と叫びます。

そのロールスに乗っていたのは、新人ばかりのアスレチックスでは異彩を放つ、メジャー11年目で前年には盗塁王に輝いているベテランのココ・クリスプでした。クリスプはロールスを停め、即席サイン会を始めました。正に「メジャーリーガー様、現る!」の図でした。

成りあがり的と揶揄されかねない超高級車とヒップホップ的イメージのスター選手の組み合わせが、貧しい人たちが多いオークランドの土地柄と、彼の登場の前に多数現れたポンコツ中古車?のルーキーたちの対比でとても輝かしく見えました。(文・写真=豊浦彰太郎)

 
[プロフィール]
福岡県生まれ。MLBライター。初めて生で観戦した小学校1年生の時、巨人対西鉄のオープン戦で王貞治さんのホームランを観たゲーム終了後にサインを貰うという幸運を手にし、生涯の野球への愛を摺りこまれた。1971年のオリオールズ来日以来のメジャーリーグファンでもあり、2003年から6年間は、スカパー!MLBライブでコメンテーターも務めた。MLB専門誌の「SLUGGER」に寄稿中。ブログ「豊浦彰太郎のMLBブログ "Baseball Spoken Here"」は高い人気を誇る。

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.