アームレスリングと聞いてどういう印象を持たれるだろう。

「要は腕相撲でしょ」
「小さい頃、遊びでよくやっていた」

そんな声が聞こえてきそうだが実際は腕相撲とは違うし、お遊びではない本気の競技として存在している。

それを証明するように、アームレスリングには世界アームレスリング連盟(以下、WAF)というしっかりした世界規模の組織があり、そしてこの日本にもWAFに認知された日本アームレスリング連盟(以下、JAWA)という組織がある。

この事実だけでも、アームレスリングという「競技」がある、ということはおわかりいただけるのではないかと思う。

実は以前、『MARUNOUCHI SPORTS FES 2016』をレポートした際に、私、ゆるすぽ4号はアームレスリングに出会っている。

当時の様子はレポートをご確認いただくとして、これをゆるすぽで取り上げない手はないと思ったゆるすぽ4号は、アームレスリングの世界をより深く知るために、毎週土曜日に遠藤ジムでやっているという練習会を見学させていただくことにした。

練習会の中でJAWAの遠藤会長と練習中のアームレスラーにもお話を伺ったので、2回に分けてその時の様子を紹介したい。

画像: 腕の格闘技! アームレスリングの世界/遠藤JAWA会長に聞く

シンプルだけど奥深い競技

JAWAは1977年に設立し、40年に近い歴史がある。

遠藤会長にはまず、その歴史の中で会長が考えるアームレスリングとは?という、もはや若干、失礼ではないかという質問を投げかけた。

画像: シンプルだけど奥深い競技

――早速ですが、会長の思われるアームレスリングの魅力についてお聞かせください。

「アームレスリングは腕力だけではなくて、速さや技術も大事な奥深い競技。決着が早くつくのもいい。着の身着のまま、体一つでいいからお金もかからない」

――今、伺ったお話だと腕相撲との明確な差がイメージしにくい方もいると思うのですが、アームレスリングと腕相撲の具体的な違いとしてどのような点が挙げられますか?

「腕相撲は腕だけで倒すイメージがあるでしょ。だけどアームレスリングは言った通りで速さや技術も大事だし、体全体を使う。とにかく自分の形が崩れないようにして相手を倒すところは、腕相撲とは競技として違うところ」

――差としては必要とされる能力の違いが大きいですか?

「他には世界的にルールが厳密に確立されているのがアームレスリング。確立される前の競技が腕相撲だね」

――ルールの違いには、どのようなものがありますか?

「例えば腕相撲は体重でハンデをつけるようなことはないが、アームレスリングは体重別、利き腕でしっかりクラス分けしている。体重50キロの人が片手で60キロを持ち上げる人にはさすがに勝てないから、その辺は競技としてしっかり体系化している。こういったルールの違いも大きい」

強くなるための方法

――アームレスリングで強くなるには、どのような力が必要ですか?

「引く力と捻る力が必要で、それを発揮するためにはフォーム姿勢が大切になってくる。そして倒す時は力ではなく体重で倒す。これを自然にやるには実戦を数多くやらないと強くはなれない」

――筋トレすればいいというものではない?

「筋力だけでは技術は身につかないし、むしろ筋肉があることで技術がつきにくいこともある。力任せではダメで、良い形を覚えた方が早く強くなる。そのためには実戦がいい」

――そうなると筋力で劣っている者が勝つことも十分にあり得るのでしょうか。

「もちろん、あります」

画像: 具体例をご教示いただく!

具体例をご教示いただく!

普及にかける想い

――アームレスリングで組織まで作ろうと思うに至った、きっかけのようなものはあったのでしょうか。

「昔、テレビ東京(当時は東京12チャンネル)で勝ち抜き腕相撲っていう番組があって、私も出たことがあるんだけど、たくさんの出場者がいた。それでいろんなところに行ってはアームレスリングで挑戦されて、まあほとんど負けなかったんですけどね、腕相撲としてやっていても。そんな中で、これだけやっている人が多いということは、組織を作れば選手が増えるのではないかということで立ち上げた」

――普及に繋げようということでしょうか。

「そう。しっかり組織を作って、年に一回でも全国大会をやれば持ち帰って支部を作りますと言う人も出てくる。それで今では40都道府県に支部が出来て、公認クラブや練習会も100件くらいはある。登録していないようなものも150や200はある。そういう人たちが熱を持って、庭とか車庫とか倉庫でやっている」

――普及という点について、もう少し掘り下げてお伺いしたいのですが。

「社団法人としての申請や補助金の申請といった活動もしている。来年のえひめ国体のデモンストレーションスポーツにもなっていて、これは誰でも参加できる形にしてまず体験してもらえるような場を作ったりもしている」

――以前、取材させていただいた『MARUNOUCHI SPORTS FES 2016』もそういう場のひとつですね。(※以前のレポートはこちら→)

「そうだね。でも、ああいうイベントだけではなく、いろんな企業の社内イベントなんかにも行くこともあります」

――企業のイベントというと、前述のイベントのような感じを企業に持ち込むのでしょうか。

「アームレスリング台とレフェリー、それにゴングを持って行って、タイミングが合えば私がレフェリーやったり解説したりというのもあるよ。盛大にやるところだと2000人も集めてやるような企業もあって、これが凄く盛り上がる」

――それは盛り上がりそうですね! ただ、お金の話で恐縮なのですが、その場合はどのくらいのお値段で……。

「アームレスリング台とレフェリーを一人で、5、6万円くらいかな」

――おぉ、思ったよりお安い! いずれ、ゆるすぽでもお願いしたいです!

「もちろんです」

――組織の充実やイベントの開催といったことで全体へ普及して行かれるということですね。

「そうですね。ただ、日本のアームレスリングはマスターズが割と充実しているので、そういう意味ではジュニアへ強く普及していきたい。例えば高校に部活なり同好会を作るような活動ですね」

――若い世代への普及ということですが、こちらの練習会には若い方も多いですね。

「例えばジュニアアームレスリングの大会もあるし、高校選手権もある。さっきの話のように学校にアームレスリング部が出来たところもある。若い世代にはそういうところから広まったり、あとはメディアから拡散したりということで集まってくれる、というのはあると思う。芸能人の方でアームレスリングが好きな方もいるから、そういうところから広まることもあるだろうね」

画像: 若い方も多い!

若い方も多い!

――芸能人の方というと、例えばどういった方がやっていらっしゃいますか?

「哀川翔さんはアームレスリングが好きで、ここに取材で来てくれたこともあるんですよ。私がアームレスリング台をプレゼントもしたし。体重の割に強かったイメージがあるね」

スポーツのバリアフリー

――以前、お話を伺った際に国体や国際大会での競技採用を目指す、というお話もありましたが、その辺のお話をお聞かせください。

「そうですね、国体や国際大会での採用と、そしてパラスポーツとして世界的な競技にしたいと思っています」

――パラスポーツですか?

「昔から車いすのアームレスリングの大会はやっているんです。ただ、それでも障がい者の大会っていろいろ、難しいでしょ? そこで自分はふたつの部門を考えた。ひとつは頸椎損傷。これは握るのが難しいので、お互いの手首を合わせてやります」

――手首相撲、みたいな感じですね。

「そう、リストレスリングになるのかな。それともうひとつが胸腰椎損傷。これは車いすに乗り、やることは普通のアームレスリングです」

――そう伺うと、あまり健常者、障がい者で大きい壁がないように思えますね。

「自分はあえてアームレスリングをスポーツのバリアフリーと言っているけど、視覚障がい、聴覚障がいでも普通に競技ができる。足だって義足で立てれば普通にできるし、腕だって片腕があれば問題はない」

――だから、あまり多くの部門を作らないわけですね。

「最初はあまり細かく分けないでやって、アームレスリングが誰でもできるという世間の理解を得たいと思います」

――確かにあまり細かい部門がなくても問題がないようにも思います。

「車いすの選手で全日本大会にあえて一般の部に出ている人もいるんです。車いすの大会に出ろと言っても、自分は一般の部に出る! と。そういうプライドも生まれるんだと思います」

――まさに誰でもできる競技ですね。

「数あるスポーツの中で比較的、健常者と障がい者が一緒にやりやすい、だからバリアフリー。格闘技でありながら一緒にやれるというのは魅力ですね。アームレスリングのこういう面を是非、広めていきたい」

アームレスリングのこれから

――大きい大会での正式競技を目指すという目標はあるかと思いますが、それ以外にアームレスリングが目指す姿というものはありますか?

「例えば子供のころに盆踊りとかやったでしょ。あれでちびっこ相撲みたいなのをやるところもあると思うんだけど、そこにアームレスリングを持って行ってね。親やおじいちゃん、おばあちゃんが応援して、町会の人とかがいっぱい集まる。そういうのもやりたい。とにかく、そこら中でやるようになってもらいたいね」

――最後に、アームレスリングの今後について、遠藤会長の想いをお聞かせください。

「わかりやすくて誰でもできる、誰でも一度はやったことがある。しかも場所もお金も必要ない、体ひとつでやることができる。若い世代にも広がっているし、この勢いで飛躍的に競技人口を増やしたいですね」

いつか世界の大舞台で、しかし、いつでもすぐそこで。遠藤会長の普及への情熱は実に熱いものだった。そしてお話の中で2016年12月18日には全日本選手権大会もあるということを伺ったゆるすぽ4号は、当然のようにこの大会もレポートさせていただくことにした。大会の様子についてはまた後日、ご紹介したい。

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