井手口純氏が明かす「現役時代で一番怖かった先輩」

画像: 井手口純氏が明かす「現役時代で一番怖かった先輩」

どんな組織でも、怖い先輩がいるものです。井手口純さんは、「お互いが厳しいのは当たり前ですよ。勝つためにみんな必死ですから」と言いますが、それでも「怖かった先輩」はいたようです。

「怖いと言うより『オーラがあった』というほうが正しいと思います。近づけない人という感じですね。そういう先輩にはなかなか話しかけられませんでした」

その「オーラがある」先輩たちは、どんな話をしてくるのでしょうか。井手口さんが覚えている台詞は、
「これをもっとこうしたほうがいい」
「お前、このままでいいのか」
「これじゃクビになるぞ」
というものでした。もちろん、練習中には怒鳴るように指示が飛んできますが、それは怖くない先輩たちからも同じだったそうです。

では、現役時代に誰が一番話しかけにくかったか。

「川口能活さん(現・相模原SC)ですね。能活さんは厳しいという、いろいろな噂がありました。入団前からその厳しさが有名で、だから話しかけにくかったですね」

川口選手は、報道陣に対してはいつも親切で、どんな厳しい質問にも丁寧に答えてくれるのですが、さすがプレーに対する厳しさと禁欲的な部分は人一倍のようです。

川口選手はとにかく失点したくない。だったらシュートを打たれなければいい。だからシュートを打たれたとき、どうすればそのシュートをさせないようにできたのか、GKとDFで追求し合っていたということでした。

最初は川口選手に対してビクビクしていた井手口さんですが、いつの間にか話をするようになったそうです。「話すといい人なのは間違いなくて」、ご飯も一緒にするようになったとか。

そしてあるとき、同点で迎えた試合の終盤に、川口選手がボールをキャッチし、すぐにフィードしようとしたそうです。川口選手のキックの精度は高く、そこからカウンターが始まってゴールが生まれたことは何度もありました。ですからそのときも川口選手がキックしようとしたのですが……。

井手口選手は周囲を見て、みんな疲れていたのがわかったそうです。そして例えボールが前線にフィードされてもみんなの動きが遅れて奪われ、相手のカウンター返しにあうかもしれないと思ったと言います。

そこで井手口さんは思わず「能活さん、蹴らないでくれ!」と叫んだそうです。

すると川口選手は動きを止め、味方の選手の動きが整うのを待ち、そこからフィードしたと言うことでした。

決勝点を取りたい。だから急いでフィードするから、そこは最後の気力を絞って走れ。それができないとは何事だ。

川口選手が試合後にそう怒っても不思議ではありません。ところが、そのまま引き分けで試合が終わった後、川口選手は井手口さんに「初めてだよ、蹴るなって言われたのは」と井手口さんを認めたように声をかけてきてくれたそうです。

川口選手もフィールドの選手の状況判断を聞かせてもらってよかったと思ったのでしょう。「そのあと、能活さんには話しやすくなりました」と井手口さんは今でもうれしそうでした。(文=森雅史)

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