全国大会でも常連、それどころか、毎年優勝候補との呼び声も高い大津高校サッカー部。
サッカーにおいても“人づくり”においても名将と呼ばれる平岡和徳総監督は、サッカーを通じて“外向き”の人間をつくることや、『24時間をデザインする』という言葉のもと、1日・1時間を大切に生きるということなど、たくさんのことを教えてくださいました。

グラウンドに置かれたテントの中で平岡先生と話し込んでいると、練習中の部員さんたちが校歌を歌う声が聞こえてきました――。

「声が出ないから校歌を歌わせていますね。あれはみんな1年生です。中学校の時にその習慣がなかったから、声を出せない。あの中から半分ぐらいはプロになりますよ。すごく才能がある。

でもまだ自分を隠しているし、照れくさがっているし、恥ずかしがっている。あれで一つ殻を破れば、当たり前のレベルが一つ上がるんです。そのきっかけづくりがあるかないかの1分、1秒なんです。

私たちの役割は、サッカーという競技を通して子どもたちの気付きの量を増やしてあげること。そうすることで動きの質を上げていき、結果として個人戦術も集団戦術も全部変わってくるんです。勝利の確率までも。

勉強においても同じことがいえます。勉強にもたくさんの気付きがある。勉強を通してサッカーがうまくなるし、サッカーがうまくなることで勉強もできるようになるんです」

画像1: 「ここに来れば大丈夫。僕の教え子たちは、一生教え子です」―大津高校サッカー部―/がまだせくまもと!#30

平岡先生ご自身も、帝京高校、筑波大学で主将を務め、選手としても名を残すとともに、父親が国語と英語の教員だったこともあり“言葉”に堪能で、まさに“文武両道”といえると思います。

「サッカーだけうまくて人間性とか学力が低いっていうのは、良くないんです。車輪の片方が大きくて、もう片方が小さい車って、前に進もうとするとそこをぐるぐる回っちゃうでしょ? それを見た大人は、サッカーの才能を伸ばしてあげようと思ったら人間力を伸ばしてあげないといけないし、逆に人間力はあるけどサッカーはもうちょっとだなと思ったら、サッカーを丁寧に教えることで人間力もどんどん良くなっていく。そして両輪のバランスが良くなったら、積めるものが増えてくる」

平岡先生ともなると、プロクラブのユースの監督などのお声が掛かることもあったはず。学校の部活の監督にこだわる理由の一つとして、その、“両輪を育てる”ということがあったのでしょうか。

「サッカーを通じた“人づくり”で選手たちを変えながら、そして指導者を増やして、指導者たちを変えながら熊本のサッカーを変えていく。高校・中学校・小学校の指導者になった教え子たちがたくさんいるので、できるだけ全員集めてカンファレンスを開いたりもしています。また、教頭の立場としてほかの部活の先生たちを指導したりする中で、学校を変えることもできる。

自分の立場や、指導する対象が変わりながらも、ずっと人材育成のポジションにいられるというのは、一つのやりがいになっていますね。

それに、今の学校には期待されているものがたくさんあると思うんです。人は、安心感とか安定感がないと成長しないんです。“苦しい”“厳しい”“きつい”は、大丈夫なんですよ。でも、“不安”とか“恐怖”があると、人は成長しないんです。

僕らの役割は、『大津高校に来れば大丈夫だ』『サッカー部のこのグラウンドに出れば自分は大丈夫だ』っていう、安心感とか安定感をつくってあげること。そのハードの部分をコントロールすることなんです」

画像2: 「ここに来れば大丈夫。僕の教え子たちは、一生教え子です」―大津高校サッカー部―/がまだせくまもと!#30

最後に平岡先生は、こんなエピソードを話してくださいました。

先日、巻誠一郎選手(大津高校OB、現ロアッソ熊本)が平岡先生のもとを訪れたそうです。ふと温かい表情になり、その時のことをこうおっしゃっていました。

「世の中には当然、嫌なことを言うやつもいるんですよ。間違いなくね。

だけどそんなものは気にすんなって、誰かが言ってあげなきゃいけない。人間ってやっぱり、ふと弱くなる瞬間があるからね。その時に、誰かが手を差し伸べなきゃね。何歳になっても。
僕の教え子たちは、一生教え子なので」

世界を舞台に戦い、苦闘を続けるJリーガーたちにとっても、社会に出てスポーツに限らず多方面で頑張っている卒業生たちにとっても、ここ大津高校はいつになっても安心できる場所であり、心のよりどころであり、ここがあるからいつになっても成長し続けられるのかもしれません。

「僕も、一生頼りにされるような生き方をしなきゃいけないね」

そうおっしゃる平岡先生の温かい目線の先には、懸命にボールを追う部員さんたちの姿がありました。

画像3: 「ここに来れば大丈夫。僕の教え子たちは、一生教え子です」―大津高校サッカー部―/がまだせくまもと!#30

さて、大津高校は、10月29日(土)に全国高校サッカー選手権・熊本県予選での初戦を迎えます。次回は、そこでも大いに活躍してくれるであろう選手たちの声をお届けしたいと思います! 彼らはここ大津高校で何を学び、何を思い、努力を重ねているのでしょうか?

(第5話へ続く)

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