被害の大きかった益城町や阿蘇の中間に位置する、高校サッカーの強豪校、大津高校。
数々のJリーガーや指導者たちを輩出し、サッカーにおいても“人づくり”においても名将と呼ばれる平岡和徳総監督のもとを訪ね、お話を伺いました。

『諦めない才能を育てる』ということを、“人づくり”の中心に置いているという平岡先生。
では、そもそも夢ややりたいことをまだ見つけられずにいる子どもたちは、どうすればいいのでしょうか?

「今は核家族化が進んで、みんな孤独でしょ? そうなってくると、どうしても自分の内側と向き合うようになってしまう。外向きの人間ができにくい。
今は、内向きな子どもたちがたくさんいます。そういった子どもたちは隠すんですよ。できることまで。理由は、照れくさいとか、目立ちたくないとか。

でも、スポーツを通じてそういったものを改善していく。サッカーは人前でやるというのが大前提ですからね。そうやって外の世界への入り口をつくってあげれば、目標もきっと見つかる。

画像1: 「出る杭は引っ張り上げる」―大津高校サッカー部―/がまだせくまもと!#28

それと、私たちがいかに心の内側に火を付けてあげられるかどうかですね。そのスイッチを入れるためには、個々が大事だと思っていることや、それぞれのストロングポイントを見極めることが重要です。それを周りの大人が見抜けないと、子どもたちにとってどうでもいい時間になってしまうんです、興味のない時間に。心(感性)を動かさないと、人は成長しないんです」

例えば巻誠一郎選手(大津高校OB、現ロアッソ熊本)は、他を思う気持ちを強く持っていらっしゃり、とてもハートの強い方だと聞いています。巻選手の心に火を付け、ストロングポイントを伸ばし、人としても選手としても一流に育てた土台が、この大津高校や平岡先生にあったのでしょう。

「出る杭を引っ張り上げて、この道を進んでいいよっていうたくさんの“オプション”を広げてあげるというのが私の考え方なんです。

結果、『あれをもう少しやっておけばよかった』とか『あれがあったから勝てた』という気付きが出てくるわけですが、そのフィードバックは個々でやらせるようにしています。そうすると、勝っても負けても前進しかない。そこには不安などはなく、それを繰り返すことによって安心感や安定感につながる。そういった環境でこそ、人は成長できるんです」

画像2: 「出る杭は引っ張り上げる」―大津高校サッカー部―/がまだせくまもと!#28

「私も高校時代に平岡先生に教わりたかったです…」と言うと、「大抵の人はそう言います(笑)」と冗談をおっしゃる平岡先生。
たくさんの部員さんたちを育んできた大津高校サッカー部と平岡先生は、熊本県のサッカー界をけん引する存在ともいえるでしょう。

そういえば、この連載「がまだせくまもと!」に以前登場していただいた国府高校サッカー部の佐藤光治監督をはじめ、熊本県のサッカー界には大津高校サッカー部のOBの方々がたくさんいらっしゃるようです。取材を通じてOBの方々にお会いする機会がありましたが、皆さん大津高校で得た経験や人の縁をとても大事にしていらっしゃるな、と感じました。

「去年のインターハイでは、決勝戦まで相手は全部大津高校の教え子でした(笑)。監督だけでなく、コーチまで。
教え子たちがみんな頑張って挑んでくるから、なかなかうちが連続優勝できないという状態になっています。

画像3: 「出る杭は引っ張り上げる」―大津高校サッカー部―/がまだせくまもと!#28

私が生徒たちと関われるのは3年間で大体1,000日程度なんですが、その中で培ったものが、残りの人生でよりどころになってくれたら、こんなにありがたいことはないです。苦しい時に、『高校時代に一緒に頑張ったあの仲間がいる』とか、『俺はあそこでもああやって頑張れたから』とか、『同級生でこんな人がいる』とか、そういったものが大きなエネルギーとなり、前に進むことができる。うちは140人部員がいるので、もれなく140人の仲間がいるわけです。それって、人生においてすごい財産になると思いませんか(笑)。

そしてOBたちの頑張りを後輩たちが見ていて、後輩たちの頑張りもOBたちが見ているという、いい意味での相乗効果がずっと続いています。だから、大津高校が前に進むエネルギーには私の魔法があるわけではなくて、全員が『年中夢求』で頑張っているっていうことから生まれてくるものなんです」

大津高校で数々の選手たちを育て上げ、指導者たちを輩出し、今年も全国高校サッカー選手権へ向けてチームを導く平岡先生。ご自身も常に前進を続ける中で、今年は試練の年であったと思います。苦境を乗り越える過程で平岡先生は何を思い、熊本の“名将”が導き出した新たな答えとは、何だったのでしょうか――。

(第3話へ続く)

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