視覚障がい者と健常者が力を合わせてプレーする注目のスポーツ、ブラインドサッカー! 今回は、Jリーグの浦和レッズが開催したブラインドサッカー体験会についてお届けしています。

ブラインドサッカー日本代表の加藤健人選手が所属する「埼玉T.Wings」の協力の下、ファン・サポーター50人、レッズ6選手が参加したこの体験会。いよいよオープニングです!

画像1: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

どことなく、写真右側の埼玉T.Wingsのメンバーの方たちと、他の参加者の皆さんの間に微妙な距離が…。まだどことなくぎこちない空気が流れています。

「皆さん、こんにちは! 今日はよろしくお願いします!」

加藤健人選手が元気よくあいさつをします。

画像2: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

「ブラインドサッカーというスポーツを知っているよという方、手を上げていただけますか?」と促します。さすが応募してきただけあって、多くの参加者の方が手を上げます。

「はい、全員手が上がっているということですね! まあ、見えてないんで、分からないんですけどね(笑)」

オチをつけて笑いをとる加藤選手。一気に場の空気が和みます。

「ブラインドサッカーは視覚障がいのある方がサッカーを楽しめるように考えられたスポーツです。自分も視覚障がいがあるということで、ブラインドサッカーの日本代表選手としてプレーさせてもらっています。

自分は高校3年生の時に、レーベル病という遺伝性視神経症が原因で、徐々に視力が低下していって、今は光を感じられる程度にしか見えていません。ですので、どれくらいの人が手を上げてもらえたかは分からないんですけど、多くの人が手を上げてくださったということですね。ありがとうございます!」

初めてブラインドサッカーを体験するという方のために、ここからは加藤選手によるブラインドサッカー講座が始まります。埼玉T.Wingsのメンバーの方たちと一緒になって、ルールやポジションについての説明を始めます。

画像3: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

次は、2人の人に立ってもらい、その間を8の字でドリブルします。

画像4: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

その姿を見て、「おー!!」という歓声。中には「本当に見えてないの?」という声も…。そりゃそうですよね。一般人にとっては、見えていたってこんなにスムーズにドリブルなんてなかなかできることではありません! ブラインドサッカーの選手のすごさをあらためて感じ取れます!

ここからは3チームに分かれて、参加者の皆さんも実際にボールに触れていきます。

こちらの青チームには、加藤選手、レッズの平川忠亮選手、梅崎司選手がいます。ファン・サポーターの方ととても近い距離でコミュニケーションを取ります。

画像: アイマスクをしながらグループの中で自己紹介をする平川忠亮選手(左から2人目)

アイマスクをしながらグループの中で自己紹介をする平川忠亮選手(左から2人目)

画像: 同じくアイマスクをしながら自己紹介をする梅崎司選手(右から3人目)。このイベントの後日に行われた試合で重傷を負いました。また元気な姿を見せてくれることを願っています

同じくアイマスクをしながら自己紹介をする梅崎司選手(右から3人目)。このイベントの後日に行われた試合で重傷を負いました。また元気な姿を見せてくれることを願っています

最初のメニューは、ウォーミングアップ! といっても、もちろんただのウォーミングアップではありません。2人一組でパートナーを組み、一人はアイマスクをします。もう一人はアイマスクを外して、加藤選手がやるウォーミングアップメニューをアイマスクしているパートナーに言葉で伝えます。

画像5: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③
画像6: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

これが意外と難しい! 自分が相手の目の前でやって見せるのであれば簡単なのですが、言葉だけで伝えるとなると、うまく伝わる言葉がすぐに出てこなかったりするようです。

加藤選手は、このメニューの意図をこう伝えます。

「コミュニケーション、伝えることの難しさを感じてもらえたと思います。皆さん、とても真面目に動きの一つひとつを伝えようとする方が多かったようですね。例えば、膝をグルグル回す運動。以前ある小学生の子どもさんはこれを、『グルコサミン』と言っていました(笑)。舞の海さんがCMでやられているそうですね。相手に伝わるのであれば、『グルコサミン』でも正解です。ですが、『グルコサミン』でも通じない人もいます。もっと小さいお子さんや、おじいさん・おばあさんには伝わらないかもしれませんし、僕みたいに見えていない人にも伝わりません。

伝え方や言葉に正解はありません。相手の立場になって、相手に伝われば、それが正解だと思います。相手の立場になって、相手がどんな人なのかなって考えながらやってもらえたらと思います」

続いてのメニューは、目隠しランニング(勝手に命名)!

画像7: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

アイマスクをした人は、置いてあるカラーコーンに向かって走ります。アイマスクを外した人はカラーコーンの位置に立って声と音を出し、アイマスクしている人をカラーコーンの位置まで導きます。アイマスクしている人は、パートナーの声と音を頼りにカラーコーンに向かって走るのです。

ピッチにさまざまな声が飛び交います。

「そっちじゃないですよ! こっち、こっち!!」
「右、右、右! いや右だって!!」
「もうちょっとですよ! あと少しです!!」

画像8: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

アイマスクをしていると、やはり皆さん怖がって思いっ切りは走れないようですね。特に声が近づいてくると、とてもゆっくりになります。はたから見ていると、まだまだカラーコーンまで十分に距離があるように見えるのですが、それでも声が近づいてくると、ぶつかりそうな気がするのか、おそるおそる動くようになっていました。

ここで、アイマスクを外している人が声でガイドしてあげることが大事になるのですが…、加藤選手はこう伝えます。

「例えば、『右、右!』という掛け声がありましたよね。自分から見て“右”だとしても、鏡のようになっているので相手から見たらそれは“左”。どちらの言葉で伝えることが正解かといえば、やっぱりアイマスクをしている人の立場になって、“左”と伝えてあげることだと思います。

他にも、『もうちょっと!』という掛け声もあったと思います。『もうちょっと』の距離感は、ここにいる皆さん全員が同じでしょうか? 自分ではこれくらいの距離だと思っていても、他の人にとっては違うかもしれません。例えば、『あと何歩ですよ』とか、『あと何メートルですよ』と伝えてあげれば、皆さんで同じ距離感になるのではないかと思います」

なるほど! ここでもやはり、『相手の立場になって伝える』ということが大事になるのですね。確かについつい“何となく”の言葉を使ってしまう場面は、自分もとても多い気がします…。でもそれは、正確には伝わっていない可能性があるということなんですね。

さて、こちらの黄色チームには、レッズのキャプテン阿部勇樹選手と、GK大谷幸輝選手がいるようです。

やっているメニューは、アイマスクを外した人がブラインドサッカー用の音の鳴るボールを前に転がして、それをアイマスクしている人が追い掛けてトラップ。トラップしたボールを、元の位置にいる人にパスで戻す、というものです。

画像: アイマスクをしている参加者に声と音でガイドするキャプテン阿部勇樹選手(右)

アイマスクをしている参加者に声と音でガイドするキャプテン阿部勇樹選手(右)

画像: 逆にアイマスクをしてガイドを受ける大谷幸輝選手(後ろ姿)

逆にアイマスクをしてガイドを受ける大谷幸輝選手(後ろ姿)

ここでもやはり、アイマスクを外している人たちのガイドが大事になります! ボールの方向、ボールまでの距離、ボールを戻す方向など。皆さん少しずつ慣れてきたのか、『相手の立場になって伝える』ガイドができるようになってきたように感じます!

こちらの白チームには、レッズのエース武藤雄樹選手とGK岩舘直選手がいました。

やっているメニューは、カラーコーンを2本立てて、アイマスクを外した人が立つ。アイマスクをしている人は途中までドリブルして、カラーコーンの間にボールを通すようにシュート、というものです。

画像: アイマスクを着けてのプレーには苦労していた武藤雄樹選手(左から2番目)

アイマスクを着けてのプレーには苦労していた武藤雄樹選手(左から2番目)

画像: 小さな子どもの参加者に的確な指示を送っていた岩舘直大谷幸輝選手(右)

小さな子どもの参加者に的確な指示を送っていた岩舘直大谷幸輝選手(右)

もちろんここでも、アイマスクを外している人たちのガイドが大事になります! ゴールまでの距離、ゴールの方向、角度など、アイマスクしている人たちにどれだけ正確な情報を伝えられるかで、成功率が変わってきます!

最後は、制限時間内にこのメニューでどれだけゴールできるか、グループに分かれての対抗戦です! 大人から子どもまで、選手もファン・サポーターも関係なく、勝利に向かって熱く盛り上がっていました!!

画像9: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

こうして全メニューが終了しました。最後に加藤選手からあいさつがあります。

画像10: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

「本日はこうした機会を設けていただき、そして皆さんに集まっていただき、本当にありがとうございました。

なかなかブラインドサッカーを体験する機会はないと思いますが、皆さん楽しかったですか?」

参加した皆さんから、「楽しかった!」という声が上がります。

「ブラインドサッカーは、視覚障がいのある人とない人が関係なく、一緒になってできるスポーツです。今日の体験会を通じて、アイマスクを着けているときには、ブラインドサッカーってこういうスポーツなのかな、視覚障がいがあるってこういう感じなのかなと、少し分かっていただけたと思います。またアイマスクを着けていないときには、どうやって相手に伝えればいいのかを考える、いい機会になったと思います。

コミュニケーションの重要性というものは、例えば街に出たときに、白杖を持っている方、目が悪そうな方、あるいは困っていそうな方に声を掛けるといった場合にもあると思いますが、それだけではなく、皆さんが会社や学校、スポーツ、家庭などあらゆる場面で重要になるものだと思います。コミュニケーションの重要性というものに、ブラインドサッカーを通じて気付いてもらったり、感じてもらえたらと思います。

ブラインドサッカーはまだまだ知られていないスポーツだと思います。僕たち埼玉T.Wingsのこともぜひ応援してもらったり、一緒に活動してもらえたら嬉しく思います。個人的には2020年東京パラリンピックでメダルを取ることを目標に頑張っていきたいと思います。これからも応援どうぞよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました!」

加藤選手のあいさつが終わると、集まった皆さんから大きな拍手が送られました。

次に、この体験会を企画した平川選手があいさつをします。

画像11: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

「カトケン(加藤選手)がよくしゃべるので(笑)、僕が言うことは特にないんですが、今日体験したことを、友達や家族の皆さんに話して、広めてもらえればと思います。少しでもブラインドサッカーや埼玉T.Wingsが活躍できるように、そして2020年東京パラリンピックでブラインドサッカーが盛り上がるように、ぜひ皆さんと協力していけたらと思います。今日はありがとうございました!」

また、体験会にギリギリ間に合い途中から参加していた、浦和レッズの淵田敬三代表取締役社長からもあいさつがありました。

画像: 短い時間にもファン・サポーターとの交流を楽しんだ浦和レッズの淵田敬三社長(黄色のビブス)

短い時間にもファン・サポーターとの交流を楽しんだ浦和レッズの淵田敬三社長(黄色のビブス)

「ギリギリ10分前に到着して、2回くらいボールに触れました(笑)。どこにボールがあるか分からなかったりして難しかったですが、とてもいい経験をさせていただきました。

浦和レッズでは、ブラインドサッカーに限らず、ハートフルクラブ(※)でいろいろな形で『こころ』を育む活動をしたり、埼玉県障害者スポーツ協会と一緒になって障がい者サッカーの大会を開催しています。トップチームはもちろんですが、私たちはそれ以外にもさまざまな活動をしているクラブです。引き続き、応援をよろしくお願いいたします。

私自身、あまりサッカーをやったことはないんですが、こういった機会にまた皆さんと一緒に楽しめたらと思います。今日はありがとうございました」

※ハートフルクラブ:「こころ」を育むことをテーマに、浦和レッズがサッカーを通じて行っている、より多くのコミュニケーションが誕生する活動。ホームタウンでのスクールやクリニック、学校の授業サポートなどのサッカーキャラバンだけでなく、アジア地域における「草の根国際交流」や、「東日本大震災等支援プログラム」の一環として東北でも活動を行っている。


今日の記念に、みんなで撮影です。

画像12: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③
画像13: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③
画像14: 浦和レッズの選手とファンの笑顔があふれた時間 ブラインドサッカー体験会の意義とは?/浦和レッズ×ブラインドサッカー③

本当にとてもいい笑顔ですね。最初は皆さん他人同士でどことなくぎこちなかった雰囲気も、一緒に汗を流したことで、本当にいい笑顔が生まれました。

やっぱりこれこそが、スポーツのいいところだよな、とあらためて感じました。年齢、性別、立場などに関係なく、スポーツによってその垣根を飛び超えて結び付く。それは国籍や宗教、そして障がいの有無も同様のことだと思います。今回のブラインドサッカー体験会を通じて『コミュニケーションとは何か?』を学んだだけでなく、『スポーツがあればどんな垣根だって超えられる』こともまた、体感できたのではないでしょうか。

まずは体験してみること。それこそが、どんな“壁”でも打ち破る第一歩になるのではないか、そう感じた時間となりました。

次回は、加藤選手、平川選手の想いを伺いたいと思います。 <つづく>

<文・野口 学(text by Manabu Noguchi)>


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