「おはようございます!」

太陽の光がまぶしい秋晴れの日。日に焼けたその人は、屈託のない笑顔であいさつをしてきました。

「朝早くから本当にありがとうございます!」

丁寧な言葉遣いと、柔和な表情。約1年ぶりの再会にも、変わることのないその振る舞いで迎えてくれたことに、どこか心が安らいでいくのを感じます。

男の名は、和田賢一。

画像1: 「ゴールの先に、守るべき命がある」/ビーチフラッグス和田賢一選手インタビュー①

ライフセービング競技の一つ、ビーチフラッグスにおいて世界最高峰といわれる全豪選手権で、競技を始めてからわずか4年半という短期間で銀メダルを獲得して世界を驚かせたアスリートです。2014年、15年と、全日本選手権を2連覇しており、今年3連覇に挑むことになります。

柔らかな物腰と意志の強さ。その両方を兼ね備え、夢に向かって真っすぐに突き進むその姿には、多くの人が惹きつけられ、一瞬でとりこになってしまう魅力にあふれています。今回はそんな和田さんの、アスリートとしての、そして一人の人間としての人生模様をお届けしたいと思います。

まず最初に、皆さんは「ライフセービング競技」とは何か、ご存じでしょうか?

和田さんはこう言います。
「ゴールの先に、守るべき命がある」と。

そもそも「ライフセービング」とは、水辺で起きる事故を未然に防ぐことを目指す活動のことです。主に夏の海辺にいるライフセーバーの方は見たことがあるでしょう。「ライフセービング競技」は、そのライフセーバーによる人命救助や水難事故防止の技術を上げることを目的につくられました。

つまり、「命を守るための活動を競技化」したものなのです。

オーストラリアから広まったといわれていて、大きくはオーシャン競技(12種目)とプール競技(11種目)に分けられます。例えばオーシャン競技には、沖合に設置したブイを回って浜に泳いで戻ってくる「サーフレース」や、砂浜を2kmにわたって走る「2kmビーチラン」などがあります。プール競技にはマネキンを要救助者に見立て、プールに沈められているマネキンまで泳ぎ、引き上げてゴールまで運ぶ「マネキンキャリー」や、溺れている人にロープを投げて救出する「ラインスロー」といった競技もあり、まさに人命救助などを念頭に置いた競技ばかりだといえるでしょう。

和田さんの「ビーチフラッグス」は、オーシャン競技の一つとなります。砂浜で20m離れたバトンラインに背を向けてうつぶせになり、1~2メートル間隔で置かれたフラッグを奪い合う競技です。イス取りゲームと同じように、8人だったら7本、その次は6本、5本と、1本ずつ減っていき、最後は1対1の勝負となり、勝者が優勝となります。

画像2: 「ゴールの先に、守るべき命がある」/ビーチフラッグス和田賢一選手インタビュー①

当然、このビーチフラッグスにも、人命救助・海難事故防止の技術を上げる要素が詰まっていると和田さんは言います。

「ビーチという場所で救助が必要となる方のもとに、できるだけ早く走っていくことを目的にしています。スタートの時に、フラッグと反対向きにうつぶせで寝ることにも意味があるんですよ。一番スタートしづらい姿勢から立ち上がり、振り返ってどこに要救助者がいるのかを素早く確認して、そのポイントにどれだけ早く到達できるか、そういう練習のためにつくられているんです。ですので、競技者はフラッグが立てられているところを見てはいけないというルールになっています」

まさにそれが和田さんの言う、「ゴールの先に、守るべき命がある」ということなんですね。

「そうですね。『この競技を何のためにやっているのか』という目的は、競技をつくった人の思いを正しく継承していくためにも、決して忘れてはいけないと思います。それと同時に、やっぱり競技としてやっているからには、勝利という目的のために突き詰めてやっていくこともまた必要なことだと思っています」

『思いの継承』と『勝利の追求』、そのどちらも大事にしたいと話してくれた和田さん。

それにしても、なぜ和田さんはビーチフラッグスを始めたのでしょうか? 次回はその思いに触れていきます。

<文・野口 学(text by Manabu Noguchi)>

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